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新型コロナによる上場企業の開示情報延期と株主総会延期 投資家への影響を考える

 

新型コロナの影響により、企業も監査法人も業務が滞っており、上場企業の情報開示に遅れが懸念されています。

3月は多くの企業が決算月であり、有価証券報告書の提出や、株主総会への影響が危惧されており、延期の話が出ています。

開示情報延期や株主総会延期が投資家にどのような影響がでるか、考えてみました。

目次

適時開示・報告書関連について

[box class=”box26″ title=”ポイント”]
  • 報告書関連は3か月延長して9月末でOK(3月決算の会社)
  • 開示情報関連は提出できるタイミングでOK
  • 投資家は情報取得が遅くなる
  • 一部の会社では投資家目線を考え、通常通り提出
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まず、開示情報関連について確認します。

提出期限が2020年4月20日から9月29日までの報告書は、2020年9月30日まで提出期限を延長

 

個別の申請は不要

主に以下の報告書が該当します。

  • 有価証券報告書
    通常は決算日から3ヶ月以内で延長する場合は申請が必要
  • 決算短信
    通常は決算日から45日以内
  • 四半期報告書
    通常は中間会計期間経過後45日以内
  • 半期報告書
    通常は四半期会計期間経過後45日以内

 

その他

  • 臨時報告書 作成自体が行えない場合には、そのような事情が解消され次第提出
    通常は遅滞なく
  • 債務超過による上場廃止基準 債務超過の改善期限2年に延長
    通常は1年

自粛で企業の財務・経理部門、監査法人が十分な業務が出来ないということもあり延長となっています。

 

一方で、投資家にとっては上場企業に投資する際に、有価証券報告書等の報告書の情報は貴重です。

延長されると身近なところでは、四季報の情報が限定的になるものと思われます。

 

企業からしても株価形成には投資家は必要不可欠です。情報開示することは、株式を保有してもらう投資家へのアピールとなるため、報告書延期の緊急措置があっても通常どおり提出で対応している企業もあります。

さらに、積極的にコロナ対策の取り組みなどを情報開示する企業もあり、そういった企業は機関投資家から評価されているようです。

情報提供に積極的な企業は今後も投資家目線としては優良企業となりそうな気がします。

 

(ご参考)リンク 金融庁 コロナ関連のコメント

(ご参考)リンク 日本証券取引所 コロナ関連のコメント

株主総会について

[box class=”box26″ title=”ポイント”]
  • 株主総会自体は期限はない
  • ただし、議決権行使の権利は、基準日から3か月以内
  • 投資家の主な議決権行使は、剰余金の処分(配当)、役員選任、決算承認
  • 投資家にとって配当金受け取りが懸念事項
  • 決算集計に遅延発生が想定され、オンライン総会や決算承認は追認する措置を検討中
[/box]

コロナの影響で決算の遅延が発生することで、株主総会が平常どおりに開催出来なくなる可能性があります。

株主総会は、通常3月決算の会社は3ヶ月以内の6月末までに開催しています。

 

しかし、株主総会は会社法上、事業年度終了後一定の時期に開催となっており、3ヶ月以内と決まっているわけではありません。そのため、コロナが落ち着いてから株主総会を開催するのでも会社法上は問題ありません。

 

ただし、株主が行使できる権利(役員選任・剰余金の処分等)は会社法上、基準日から3ヶ月以内が期限となっています。そのため、株主の権利を守るため基準日から3ヶ月以内に株主総会を開くことになります。

では、基準日とは何か。

基準日は通常は定款で定めており、決算日となっています

つまり3月末の決算日が基準日となります。

結局は3月末を起点として3ヶ月以内に株主総会を開催する必要が出てきます。

公告を出すなど一定の手続きをふめば基準日を動かすことは可能ですが、基準日を動かすと配当の権利日も動くことになり、3月末の権利基準日にもっていても配当を受け取れない可能性があります。

投資家にとって配当金を受け取ることは大事なポイントですので、基準日を動かすのは難しいと個人的には考えます。

そのため、現状では株主総会を延期で調整している企業は少なく、場所の変更等で対応しているようです。

 

ただし、一定の要件を満たす企業は剰余金の処分を株主総会ではなく取締役会で決議できます。

以下、取締役会で決議できる企業の要件です。

  1. 取締役の任期が1年(以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の日まで)である
  2. 会計監査人を設置している
  3. 監査役会を設置している
  4. 定款に「剰余金の配当につき取締役会で定めることができる」旨の記載がある
  5. 会社計算規則第155条の要件を全て満たしている

株主総会を延期して、剰余金の処分は取締役会で決議した企業で確認できたのは「ディップ(証券コード2379)」です。こうした企業は上場企業の3割程度だそうです。

 

株主総会から脱線しますが、配当の話が出たので株主還元として自社株買いについて触れておきます。

自社株買いは株価低迷時には株価を支える効果があり、コロナの影響で株価が下がったタイミングで自社株買いをした企業が多くありました。

しかし、自社株買いは、自社の資金を使うことになります

4月27日の日経新聞一面に「配当より雇用維持を、コロナ対応で機関投資家が転換、製薬には連携要請。」との記事がでていました。配当に限らず自社株買いも同様です。

配当や自社株買いで、企業も投資家も短期的な利益を追求するのではなく、その資金を雇用維持に使うことが長期の企業発展、さらに社会の発展になる、との考えです。

 

日本企業は内部留保で現預金が潤沢です。この資金の使い方をどうするか、コロナ禍でその企業の経営姿勢を見ることができると思っています。戦略的に資金は使ってほしいものです。

まとめ

投資家の立場では今回の、企業の情報開示の姿勢、株主総会の対応、資金の使い方等コロナへの対応を見ることで、企業の臨時対応力を見ることができるのではないでしょうか?

コロナをきっかけにして企業がどう変わっていくのか、長期の投資リターンに大きな影響を及ぼすので、注視していきたいと思います。

最後までお読みいただきましてありがとうございます!

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